「どうしたんだ? いきなりテンション下がってね?」
「いや、あ、ううん。なんでもないよ」
「なんでもない、か」

少し寂しそうな表情で慎太郎がつぶやく。わたし、なにかへんなこと言ったかな。

「どうしたの?」
「昔の琉羽なら、なんでも俺に言ってくれたのになぁって思っただけ」
「あー、まぁ、昔はほら、わたしも子どもだったしね。今はなんでもかんでも言えないよ」

ましてや慎太郎と菜月の関係を気にして、勝手に想像して、落ち込んでるなんて。

とてもじゃないけど言えない。

ふたりは今のところ進展はなさそうだけど、この先どうなっていくのかな。

「まぁ、たしかにそうだな。もう無邪気な子どもじゃないし、いつまでも同じじゃないよな」

しみじみとそう話す慎太郎の横顔に、なぜだかとても胸が締めつけられた。

わたしたちはもう無邪気な子どもじゃない。

だけど大人でもない。だったら、今のわたしたちはなんなんだろう。

大人にも子どもにも属さない宙ぶらりんの状態。

「けどさ、変わらないものもあるって」
「変わらないもの?」
「琉羽の中の根っこの部分とか、自分が大事にしてる信念とか。そういう筋みたいなもんは、大人になっても変わらない気がする」
「すごいね、慎太郎は」

わたしはブレブレだよ。流されまくってるよ。

年齢を重ねるたびに、うまく生きられないようになっている気がする。

でも慎太郎はちがう。

大きくなるにつれて、どんどんたくましくそしてしっかりした人間に成長してる。

そんな慎太郎の隣に並んでも、恥じない自分でいたい。