「チョコ、ありがとう!!美味かったよ」


久しぶりに近い距離で目を合わせた。


「ありがとうございます……」


少し小さな紙袋を受け取ると想像以上に、重みがあった。



「……開けていいですか?」


「もちろん!!!」



まだ、プルプルと震える手で紙袋の中に手を入れる。









「……えっ……マグカップ?」


「毎朝、コーヒーでも紅茶でも飲んで元気に過ごせるように、な」


私の手には





黄色がベースのマグカップで、白いチューリップ型がとてもかわいい……。


「白いチューリップ?」




黄色のマグカップには、白くて可愛い、チューリップのイラストが入っていた。

「んー、藤田のイメージは華麗に舞う桜だと思ってたんだけど、話したり一緒にいるうちにチューリップかなって…」


嬉しくて、嬉しすぎて言葉にならない……。


コンビニで買った、クッキーとかだと思ってたから……。


私の事を考えて、このマグカップをわざわざ選んでくれたんだ……。


一時でも、先生の中に

私が居たんだ……。




「チューリップの葉っぱ、分かるだろ?」


感動して涙目の私に、先生は突然そう聞いた。


「……はい」


「チューリップは、大きな葉っぱが印象的だろ?その間から伸びた茎の先に、つりがね形の花を開く」


うん……。


「だから、お前だと思った」


「えっ?」


「周りの奴らを大切にして思いやって、支えられて今のお前が居る。綺麗な花を咲かせる」


もう、溢れた涙は止まらなかった。


「俺も、菊地沙織も、担任の先生もお前の味方だろ?みんなが居て、そこに、杏ちゃんが存在するんだよ」