「あれ。二人とも、いい感じ?」


トイレから戻ってきた沙織は、私たちを見て、ニヤリと笑った。


「違うわ、アホ。それより、トイレ長すぎだろ……」


「ヘアースタイルを整えてたんです!」


「子供のくせに、何がヘアースタイルだ!」


そんな二人のやり取りを見て、ぷっ、と笑った。


兄妹喧嘩みたい……。


私、もっと先生を知りたい。


その時、初めて感じた気持ちだった。



「あ、今、藤田さん笑っただろ。二人ともゲンコツ!」


先生は、私たちの頭を、軽くコツンと叩いた。






「さ、遅刻者もいないみたいだしHR中だから、静かに教室戻れよ」


先生は、ヒラヒラと手を振った。


「はぁーい。またね、つよぽん」


沙織は先生に大きく手を振った。


「おい……佐伯大先生だろ?」


「ほら、杏も」と沙織に言われ「つよぽん、またねっ」と手を振った。


「お前ら二人、覚えてろよ~」


呆れ顔で笑う先生も、かっこいい……。



あの時から、少しは仲良くなれたかな。



先生の中に、

生徒としてでも、私は

ちゃんと居るかな……。