今日もまた、沙織と昇降口に立つ。


大好きだった春も終わり、いつのまにか梅雨の季節に入った。


空はどんよりと、分厚い雲を広げる。




「いやー、もうすっかりあっちぃなー。お、またお前らか」


両手をポケットに入れた先生は、欠伸を噛み殺した。

「お前らとは失礼ねー」


「しかし、仲いいよなぁ……。女子ってさ、なんでそんなに仲良しさん同士くっついてるわけ?」


「なに?混ざりたいの?」

「……」



こんな時間も

私は、楽しくて仕方がないんだ



卒業したら、こんなワイワイすることも少なくなっちゃう気がする。



「あたしら、毎日恋バナしてるもんね」


沙織の言葉に、先生は「えっ」と声を漏らす。


「へー、いっちょまえに好きな男いるんだ」


「大丈夫。先生じゃないから」


沙織は、にっこりと笑いながら、先生の背中を叩いた。




「そりゃよかった。あなたに好かれたら、毎日ギャーギャーうるさそうですからね」


「失礼ねっ!!」


それまで、一言も話さない私に、先生は、笑顔を見せた。


「藤田は?どんなやつが好きなの?」


「んー。どっちかっつーとヘタレかなぁ」


「お前に聞いてねぇよ!!」

私より先に答えた沙織へのツッコミに笑いながら、先生を見上げた。





「先生は、私の好きな人、どんな人だったらいいと思う?」




私の好きな人は、先生なんだよ。



どんどんと膨らむ気持ちは、貴方に送れない言葉。