「先生……だめだって……もう、やめて。これ以上やったら、壊れちゃう……」


「いいだろ、これくらい」


「やだぁ……やめて」


「やめないよ……ほら、もう少しで終わるから」


その時、ガラッと勢いよくドアが開いた。



「あ……学年主任。どうしました?」


「あ……?」


学年主任は、問題集を引っ張り合う私と先生を見て、ぽかんと口を開けた。


「あ……いや、なんでもないよ。勉強ならいいんだ、勉強なら、ね……。ただ、もう遅いから気をつけて帰りなさい」


目を泳がせながら、数学教科室を出て行った学年主任を見て、2人同時に笑った。



「ぷっ、アハハっ」


「……なにか勘違いしたみたいだな」





学年主任ってば……。


笑いを耐え、目に浮かぶ涙を拭いながら、時計を見た。


「うわ、もうこんな時間だし……3時間も数学やってたんだ……」


「ほんとだ!!さすがに悪かったな……送ってくよ」


先生は車の鍵を持ち、微笑んだ。


「あ……私、近いんで大丈夫です」


「歩き?」


「はい!家まで10分くらいなんで……」


私が鞄を持ち、笑うと、先生は車の鍵を机に置いた。


「じゃあ、歩きで送るよ」


「えっ……?」


「さすがに、女の子1人じゃ、帰せないし。っていうか、君に何かあったら嫌だし」


それが、居残りさせた生徒への心配だったとしても、私は、嬉しくなっちゃうんだ。


恋する私に、最強の先生マジック。