結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。



「意味分かんない……。

例えそうだとしたら、あたしが結城を笑顔にする!」



はっ…


この人、ほんとに馬鹿なの?



ここまで言っても分かんねーのかよ。



「逢坂さんが結城を笑顔にできるなら、もうとっくに結城は笑顔になってるんじゃないの?」



なのに結城は、笑うどころか生気がない。



「っそれは……」


「逢坂さんに結城を笑顔にすることはできない。

結城を心からの本物の笑顔に出来るのは、あの子だけだ」



強く、俺はそう言った。



「本当に結城のことが好きなら、相手の幸せを願って手を引くことも大事だと思うけど」



そう言って立ち去ろうとした俺に、逢坂さんは言った。



「あんたは…、手を引いたの?

その人の幸せを願って…」



思い出すのはあの日、ゆきちゃんと水族館に行った日。



そして俺がゆきちゃんに振られ、ゆきちゃんの幸せを願って身を引いた日。



「……そうだよ」


「どうして?」



出来れば俺が幸せにしたかった。

出来れば俺がゆきちゃんの笑顔を守りたかった。


だけど…


「どんなに強く俺が願っても、その子の笑顔の源は俺じゃない。

アイツだったから。

だから、俺は彼女の笑顔を守るために身を引いた」



俺の幸せはゆきちゃんの幸せ。


それは今でも変わらない。



「君も、よく考えた方がいいよ」



そう言って、今度こそ俺はその場を立ち去った。