「ねぇ」
俺は一人残されて不機嫌な顔をしている逢坂さんに声をかけた。
「なに?」
そんなに結城を逃がした俺が鬱陶しいのか、ギロリと睨んできた逢坂さん。
でも俺はそんなのどうでもいい。
正直逢坂さんには言いたいことがあったから。
「君さ、そんなに結城が好き?」
「好きだけど?」
「じゃあなんでそんな結城の幸せを奪うようなことができるの?」
俺には到底理解ができない。
俺だったらゆきちゃんの幸せを一番に願うから。
「それにさ、最近の結城、生気がまるでない。
それが逢坂さんのせいだって、なんで気づかないの?」
どんどん自分が冷たい口調になってってることが分かる。
だけど、この子はゆきちゃんのことも傷つけてるから。
「逢坂さんは結城が好きで、ただ結城を振り向かせたいのかもしれないけど、逢坂さんのその行動で傷ついて苦しんでる人がいるってこと、忘れない方がいいんじゃない?」
そして俺は、ゆきちゃんのあの辛そうな笑みを頭に浮かべて逢坂さんにそう言った。
