結城くんが学園王子の仮面をはずしたら。



とりあえず赤く充血して腫れた目をなんとかし、学校に着いたのは昼休みの途中だった。



あやちゃん、心配してるよね…



なんて頭の中で考えながら校舎の中に入ろうとしたら、

「あれ?もしかしてゆきちゃん?」


急に声をかけられた。



知らない声に誰?と思いながら振り向くと、明るい茶髪のかっこいい男の人が立っていた。



「やっぱり!ゆきちゃんだ!」



目の前のこの男の人は、どうやらわたしのことを知っているみたい。



だけどわたしは知らない。



誰だろうと首を傾げると、目の前の人は少し慌てたように言った。



「あぁ、ごめん!

ゆきちゃんは俺のこと知らないよね!

俺は矢本舜。直也の幼なじみ兼親友だよ!」



人懐っこい笑顔でそう言う矢本くんには悪いけど、きっと今のわたしは眉を寄せて顔が歪んでると思う。



正直、今結城くんの名前は聞きたくなかったから。



だけど矢本くんはお構い無しにどんどん話し続ける。



「直也から聞いたよ〜。

今ゆきちゃん家に直也が居候してるんだって?

いいな〜。俺もゆきちゃん家行きたいな〜」



なんて話す矢本くんに、わたしは軽い印象を受けた。