「おはようございまぁす!(*^_^*)」
ちょっと緊張して、初めて部室兼稽古場に足を踏み入れたとき、ズキンっていう心臓の音がした。あっ、って声を上げてたかも知れない。

細いけど浅黒い項。男の真っ白い首、特に後側の項が白いヤツは頼りなさ気で何となくキライだけど、フェチってほどじゃあない。てもそのシルエットに釘付けになっていた。

「おい新人、元気ないな!ココがどこか分かってるんなら声位元気にしろ!」
奥から良く通る声がした。
一歩踏み入れてから、思っているほど時間は経っていない。
「すみません、でも私裏方希望で・・」
ようやく周りが見えてきた。でもそれより、くびの主の、前髪の奥に覗く瞳を見入ってしまった。
「大劇団じゃないんだ!裏も表もないぞ」
大声の主が続ける。この前はアタシを勧誘するんで下手に出てたくせに。身内になった途端・・
ここの文学部に入るのが夢だったけど、やっぱし記念受験に終わった。入ったのは皮肉にも隣の女子大(T_T)
雰囲気を味わいたくて、新歓シーズンの本命キャンパスをうろつくうち、ここの劇団の団長に呼び止められた。まくしたてられてるうちに、青臭い演劇論とかも悪くない気がして来て、気がついたら馬場の居酒屋で入学初のビールをオゴられて・・・
断りきれなくなってノコノコ来たのが今日の初稽古だった。あの居酒屋では、あのくびの主はほとんど印象に残っていない。居なかったかも知んない。

「そうだこちら・・」と、団長のイケダがようやく私を紹介してくれた。やっぱ、半分は初めて見る顔だ。一人ひとり紹介されて。くびの主が2学年上のアキラだと分かった。会釈をしただけで声は聞こえなかった。大声出せ、ってワリに、発しないヤツも居るじゃん!