「……ねぇ」 「……んだよ」 教室に帰るまでのわずかな時間。私たちの空気はどことなく重かった。 「拓海の好きな人、ってさ」 聞いてはみたいけれど、なんとなくいつものテンションで聞きづらい。 だって拓海のあんな切ない顔、初めてだもん。 「杏。もしかして察した?」 「……たぶん」 口をつぐんだ私の代わりに、次は拓海が言葉を発する。 その会話に核心をつく言葉は出ていないけれど、それだけで十分だった。 拓海の好きな人は、彼女だ。 私の好きな人の好きな人でもある……白石ゆめちゃん。