「んー。どれにしよっかな」

「早く決めろよ」


そして体育が終わり、生徒ホールにある自動販売機で拓海にジュースを買ってもらっているとき。



「あれ、唐沢じゃん」


よく知っている声が、拓海を呼んだ。



「おー、高野か」

「何してるの?……って、あれ、遠山さん?ははっ、なんか最近ここでよく会うね」


その声の主は、言わずともわかるだろう優希くん。


拓海の陰にいた私の存在にまで気付いてくれて、そして声までかけてくれた。



「ゆ、優希くんっ。そうだね、珍しいこと続きかな」


あくまでも平静を装って会話をするけれど内心は心臓がドキドキだ。



ま、まずい……。こんなタイミングで会うなんて。

今体育終わりだからジャージだし、髪だって完璧じゃない。


慌てて手ぐしで前髪を整えたけど、即興的なこの身だしなみで間に合うわけもなかった。