いま杏とこんな状態になっていなければ、いつもどおり隣にいられたのに。 あんな格好するなんて聞いてねぇよ、バカ。 そんなどうしようもない独占欲ばかりが掻き立てられて、呆れを通り越して笑えてきそうだ。 『拓海が、ついてなくてよかったの?』 あぁ言われたことには正直ムカついたし、情けなくもなった。 ……けど、だからといって、ムキになってあんな言い方したら余計に雰囲気悪くするのは当然だ。 それに、もうひとつ。 ヤケに耳に残っている杏のあの言葉。 ───あいつの好きな人は、もう高野じゃない。