……好き、なのに。 拓海のこと、大好きなのに。 それなのにその本人にあんな態度とって、逃げて。私はいったいなにをやっているんだろう。 ボールを蹴っていた拓海が、ふと動きを止めた。 「……っ、!」 そして一瞬、こちらに顔を向けた気がして、反射的にしゃがみ込む。 ……あぁ、また逃げてしまった。 「ごめん……っ」 いまさら謝ったって、もう遅いのはわかっている。 それでも口に出たその言葉は、そのまま誰にも届くことなく、虚しく溶けていった。