情けない。嫌い、こんな自分。 いつもいつも、私は彼女に嫉妬ばっかりだ。 拓海の一番近い距離にいるのは私で、私の一番近い距離にいるのは拓海なのに。 こんな欲張りな気持ち、知らない。 「……杏」 「……ッ、!」 不意に聞こえた大好きな人の声に、肩がびくっと震えた。 戻ってきた拓海が、部活姿の拓海が、……あの子を心配そうに抱きかかえて通りすぎて行った拓海が、ゆっくりと私のところへやってくる。 「ぁ……、白石さん、大丈夫だった?」 なんとか出した声は少し細い気がして、小さく咳払いをした。