「……〜っ」 首を、横にふるふると振った。 小さいその動きは、たぶん、いまの杏の全力。 「……は」 「……勘違いじゃ、ない」 「っ」 あまりにも予想外で、不意打ちで。 ……うわ、くっそ。やられた。 自分で聞いておいてうまく反応できないなんて、情けないにもほどがある。 うまく杏の顔を見れなくて、彼女の手を引いて歩いた。 今度は、ゆっくり。でも、俺の方がやや前で。 顔なんて、見せられるわけがない。