名前くらい……だなんて思うけれど、かといって他に名前で呼んでいる女がいるかと言われたら、そんな人はいない。

杏しか、いない。



「いままで俺が女子に絡んでても我関せずだったくせに、さっきは割り込んでくるし。おまけに普通に女子に触ってるし、笑ってるし。唐沢、俺は度肝抜かれたぞ」

「……んな大袈裟な」


ビー玉取りを早々に諦めたらしい安達は、その瓶でからかうように俺の肘をつつく。


物でやんな、物で。



「別に女嫌いじゃあるまいし。俺だって普通に喋ったり笑ったりするんだけど」


そう言いながら、ちょっかいをかけるその瓶を押しのける。


それでもなお、しつこい安達は「いやいや」と首を横に振った。