「ねっ、さっそく行こうよ!」
「うん」
相変わらず明るくて人懐こい香里奈は、そう言って私の手を引っ張る。
他のみんなも後ろからついてきて、私たちは出店を回った。
カランカラン、と下駄の音が揺れる。
不意に、私の手を引いて少し前を歩く香里奈が振り返って、にこりと笑った。
「杏樹のその浴衣、すっごく綺麗!美人な杏樹によく似合ってるね」
今日は、思い切って浴衣を着てきた。
それをさっそく香里奈に褒めてもらえたら、思い切った甲斐もあったかも。
「えへへ、ありがとう。香里奈の浴衣もすっごくかわいい。その桃色が香里奈にぴったりだね」
私の浴衣は、藍色生地に淡い薄紫色の菖蒲模様。
香里奈のようなかわいい桃色なんて着こなせる勇気がなくてこの浴衣にしたけれど、センスのいい彼女にそう言ってもらえると嬉しくなる。



