「あ、あははっ。なにそれ」
悟られたくなくて、咄嗟に笑って答える。
なにそれ。
なに、これ。
ずっと会いたくてたまらなかったくせに、いまだけは電話でよかったと心から思ってしまった。
『俺だって寂しんだよ。お前に会えなくて』
「……っ」
『杏?聞いてる?』
だって、たぶんいま、私の顔真っ赤だ。
こんな顔、見られるわけにはいかない。というか、そもそも目の前でこんなこと言われたら、ドキドキで変になっちゃう。
「う、うん……っ。聞いてる」
拓海って、こんなこと言う人だったっけ。声って、こんなに優しかったっけ。
……私、いつもこんなにドキドキしてたっけ。



