「拓海?」 「あー……、マジか。そういうことね」 「え?」 伏せた視線が、髪をかきあげながら上を向く。 その仕草に思わずドキッとしてしまって、次は私が目を伏せた。 「俺も大概バカだなー……」 笑い声に混じってボソッと呟かれた言葉は、上手く聞き取れず。 「いまなんて?」 「んーん。杏ちゃんには教えない」 聞いても私の頭をポンポンと撫でてうまくはぐらかしてくるものだから、それ以上聞くことはできなかった。