頭の中でブンブンと否定して、中山くんには一言「ううん」とだけ伝えておく。
「でも、大事な人なの」
続けて口にしたその言葉は、自分で言っておいて恥ずかしくなった。
いざ言葉にしてみると、びっくりするくらい自分の中にストンと落ちる。
「そっか。でもさ、付き合ってないってことは、僕にもまだチャンスはあるよね?」
「え……?」
そこまで私が伝えたのに、目の前の彼は一歩、また一歩と近づいてくる。
「ち、チャンスって……。友達、じゃなくて?」
「あぁ、そうそう。"まずは"友達」
にこりと笑う彼の真意はわからない。
近づく度に私も一歩下がるけれど、そろそろ限界だ。



