「性悪め」
「杏ちゃんとデートするためならなんとでも」
私が悪態をついてもサラリと受け答えるこいつは、つくづくイイ性格をしてる。
でも、なんだかんだ拓海とのお出かけに期待している私も私だった。
拓海といると、どうも安心してしまう。
「ねぇ、あの人カッコよくない?」
「わっ、ホントだ〜!あれ、でも手繋いでるよ。彼女かな?」
歩いてる途中で、そんな声が聞こえた。
あいにく視界はぼやけていて誰に言われてるかはわからなかったけれど、私たちの……というか、拓海のことなのはたしか。
やっぱりこの男はモテる。
そんな人が実はいま、失恋の傷を癒すために私と一緒にいるだなんて夢にも思わないだろう。



