拓海のバカ。歩くの早すぎ……っ!
小走りでやっと追いついたときには、もう下駄箱。
「足が遅いねぇ、杏ちゃんは」
「うるっ……さいなー」
「ははっ、この距離で息切れすぎ」
乱れる呼吸を整える私に、拓海は呆れ顔で笑う。
サッカー部と帰宅部の差を軽んじてるよ、拓海は。本気で体力つけよう。球技大会のあの短い期間だけじゃ無理だ。
いまだ笑う拓海にムスッとした顔を向けると、突然、笑っていた拓海の表情がピタリと止んだ。
「拓海……?」
その視線は私に向けられたものではなくて、やや後方。
「───……杏」
振り返ろうと思ったけれど、それよりも先に拓海の手が私へと伸びて、次の瞬間にはカチャリとメガネを外された。



