メガネをかけたくても、私の度数が強すぎてかけられないことに苦戦してる拓海を見るのは面白かった。 「もう〜、そろそろ返してよ」 「あー、悪りぃ悪りぃ」 出した私の手の上にメガネを戻そうとした拓海が、なぜか急にピタリと動きを止めた。 「……拓海?」 「めっちゃいいこと思いついたんだけど」 「?」 眉をしかめて顔を見上げる私に、本人はニヤリと笑みを浮かべる。 「失恋した杏ちゃんに、俺からひとつ提案があります」 また私をちゃん付けした拓海は、そう言ってやっと私の手にメガネを返してくれた。