あまりの距離の近さに、右の目元にある涙ボクロがはっきりと見えた。
「……っ、バカ」
「あれ?杏ちゃん照れた?」
思わずふいっとそらしてしまった視線に、拓海はくすくす笑いながら、スルッと私の髪を撫でて、手を離す。
こんなときでもからかって楽しむ余裕がある拓海が羨ましい。
そして、そんな拓海に不覚にも照れてしまった自分が悔しい。
「そのさ、『杏ちゃん』って呼ぶの、完全にバカにしてるよね」
「……さぁ、どうでしょう?」
「わー、その間ムカつく。拓海のくせに〜」
キッと睨んでも、あくまでも拓海は楽しそうにケラケラ笑う。



