「だから気にすんなって」

「……ううん、そうじゃなくて」


振られてきたよ、よりも先に、私は拓海に言わなきゃいけないことがある。



「私、優希くんの背中押してきた」


目が思わず揺れてしまう。

私だけが失恋できる結末だったらどれほどよかったことか。


でも、私のこの行動は、同時に拓海のことも傷つける。


「……そっか」


なんの抑揚もなく拓海が発したのは、たったそれだけ。


それからしばらく、私たちの間に言葉はなかった。



ただ私の右手と拓海の左手が、お互いの気持ちを汲み取るのように重なっているだけだった。