嫌な顔ひとつせずに引き受けてくれる優希くんは、本当に優しい人だ。
「あ、でも」
けれど次の瞬間、申し訳なさそうに眉を下げながら、優希くんは言った。
「遠山さん、唐沢に直接渡したかった？」
……瞬間、嫌な予感がしたと思った。
たぶん。ううん、絶対、これは。
「え……？」
「2人、付き合ってる……んだよね？」
あぁ、ほら、やっぱり。
ズキン、と急に心臓が重くなった。
会えただけで嬉しい私の気持ちを、この人はたった一言でどん底に落としてしまう。
……私の好きな人は、私と拓海のことを勘違いしている。あの噂を、信じている。
優希くんは優しいから、きっと私たちの会える機会を奪ったんじゃないかって、気を遣ってくれてるんだ。
そう必死で自分に言い聞かせて、なんとか制御をかける。
わかってる。その優しさの意味はわかってる……でも。やっぱり。
