「私は誰なんだろう?」

草原を歩きながら
女の子は小さくつぶやきました。

名前は?今何歳なの?
住んでいるところは?
親や兄弟はいるの?


自分の頭の中をひっくり返して
しっちゃかめっちゃか考えても

女の子はわかりません。


そうです。
女の子は自分のことを
すべて忘れてしまっていたんです。


女の子は立ちどまって
あたりを見渡します。

顔が青ざめて
体が小刻みに震えています。

女の子は少し怖くなってきたのです。

だって当たり前ですよね。

どこだかわからない草原の中
独りぼっち。

しかも自分の記憶が
一切なくなっていたんですから。

怖くなっても助けてくれる人は
当然いません。

目に涙をためて
震える女の子。

でもその時

自分の背後に広がる大空に
女の子は何かを見つけました。

大空を夢中で眺める女の子。

「きれい...」

独りぼっちで震えていたのが
嘘みたいに

女の子は微笑んでいます。

いったい何を
見つけたんでしょう?