私はそっと立ち上がり、またベンチに戻った。



遠くで聞こえた母親の。



「ごめんね」



の声。



きっといいお母さん。



あのひと時だけ気を抜いてたんだろう。



でもその一瞬が命取り。



私は思う。



ねぇママ聞いて?



あなたがあたしの話を聞いてくれてたなら。



あたしはきっと。



この声を失うことはなかったから。








end