「トモ」
要が呼ぶ声がして、朋世はハッと意識を引き戻す。
動揺していることを精一杯ひた隠し「……何?」と問いかけた。
要はソファーの位置から朋世の方を指さした。
「お湯沸いてる」
彼が示していたのは朋世本人のことではなく、沸騰してシューシューと音を立てているヤカンのことだった。
朋世はハッと我に戻って火の元を切る。
お湯を注ごうとカップを手にするが、うまく掴めずにそのまま床に落としてしまった。
「……あっ!」
カチャンという音をたててカップが割れる。
その音を聞いた要が「どうした!?」と慌てて駆け寄ってくる。
「ごめん、カップ割っちゃって。すぐ片付けるから……」
朋世はカップの破片を拾い集めようと手を伸ばした。
しかし、気持ちが焦って破片で指を切ってしまった。
「痛っ……」
人差し指の先から赤い鮮血がじわりと溢れる。
自身の人差し指を反射的にパクッと口にくわえた。



