やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ


「逃げるなんて……酷いなぁ……」

男は朋世の腕をつかんで言う。
時折、ヒックと喉を鳴らして、酒臭い息を吹きかけた。

「おじさん傷ついちゃったから慰めてよ……」
「は、離して……」

朋世はつかまれた手を振り払おうとしたがビクともしない。
それどころか、その力は強くなっていく一方。

「離したら逃げちゃうでしょ……」

当たり前だ。
だから離してくれと言っているのに。

「桜の木の下で……っていうのも悪くないね……」

男はニィッと(わら)って朋世の身体を抱き寄せた。


怖い、怖い、怖い――…


恐怖心で身体が思うように動かない。
喉に蓋をされたみたいに声が出せなくなった。

涙がじわっと目尻に溜まっていく。
近道だからって公園なんて通らなきゃよかった……なんて後の祭り。