やっぱ、お前は俺じゃなきゃダメだろ


夜の公園は昼間とは少し雰囲気が違う。
咲き始めの薄ピンク色の花をつけた桜の枝が夜風でザワザワと音を立てながら揺れている。
春の訪れを目に見える形で感じてしまう。


私を見て――…


桜の花がそう言っているような気がして、朋世は導かれるように公園内に足を踏み入れた。

広い公園の中腹には古い木製のベンチがある。
昼間は犬の散歩をするお年寄りや子どもが遊んでいる姿を見守るママが座っていることが多い。
しかし、今座っているのはカップ酒片手に酔っ払っている中年男性。

朋世はその男性の(うつ)ろな瞳と目が合ってしまった。


早く通り過ぎてしまおう……。


心に鳴り響く警鐘(けいしょう)が彼女の歩く速度を速める。
あからさまなその態度が余計にでも酔っ払いの気をひいてしまったのか、飲みかけのカップ酒をその場に投げ捨てて朋世の方へ近づいてきた。