要は彼女の言葉になにも返さない。
その代わりに鞄からあるものを取り出して、それを朋世に差し出した。
「これ返しとく」
要が差し出したのは、幼稚園の頃に朋世が彼に渡した髪飾りだった。
“これがあればまた会える”
幼き日の思い出が詰まった大切な髪飾り。
これを手渡した日が昨日のことのように朋世の脳裏によみがえってきた。
「持っていてくれてたんだ……」
「一応借り物だしな」
「そうだね」
朋世は差し出されているそれを両手で大事に受け取った。
「それから“俺が好きなのは昔からトモだけ”っていうのは本当だから」
「からかわないでよ……」
「そう思うならそれでもいいよ」
要は言う事だけ言うと、軽く手を上げて「じゃあ、俺先に帰るから」とシロイルカの水槽エリアから出て行ってしまった。



