「あ、そうだ。ちょうど花火終わったし、
よかったら一緒に帰らない?」
若菜ちゃんの提案に乗ることができなかったわたしは、何も言わずその場から走り出してしまった。
たぶん、いきなり理由も言わず逃げるように
去って行ったわたしの行動は、凪くんたちからしてみれば意味がわからないと思う。
一瞬、引きとめる凪くんの声が聞こえたけれど、無視して全力で走った。
浴衣と下駄のせいで走りにくいのに、
夢中で走っていたら、そんなこともう気にならなくて。
代わりに、視界を揺らす涙のほうが
気になって仕方ない。
何度拭っても、視界はクリアにならない。
息が苦しい、胸も苦しい。
この苦しさは走ったからではなく、
凪くんを想っての苦しさだと思うと、
さらに締め付けるように胸が圧迫される。
いっそのこと、
この苦しさや涙は全て、
なかったことにしてしまいたいくらい━━。

