広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き

駅から5分ほど歩き、無事に我が家に到着した。

少し緊張した様子の広瀬くんとともに家の中に入る。

『ただいま』と声をかけると、すぐに奥からエプロン姿のお父さんが出てきた。

「お帰りー、のんちゃん。……あれ?」

お父さんは広瀬くんの姿を見て、かすかに驚きの表情を浮かべる。

そうだ。

男子をつれていくってまだ話していなかった。

「はじめまして。日下部さんのクラスメイトの広瀬主税といいます。本日はありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」

一方、広瀬くんは緊張しながらも完璧な自己紹介と挨拶。

きれいな角度で頭を下げた。

「あ、これはご丁寧に。はじめまして、和花の父親です。いやー、ごめんね。てっきり女の子が来ると思っていたからビックリしちゃって」

ははは、と照れたように笑うお父さん。

まだ若干の動揺が見てとれる。

思えば男の子の友達を家に呼ぶのは初めてだ。

もともと男友達があまり多くないこともあり、家で遊ぶのもお父さんに紹介するのも、いつも女の子だった。

お父さん……

あらぬ誤解をしませんように。

広瀬くんを彼氏だと勘違いしたら申し訳ない。

そうハラハラしていた私だったけれど、広瀬くんはお父さんの態度を全く違うふうに取ったようだった。