そう言った広瀬くんがひどく寂しそうにみえた。

眼鏡の向こうの澄んだ目。

そこに諦めが浮かんでいるように見えて、私までせつない。

……クラスでの広瀬くんは、まさに頼れる委員長という感じでみんなの人気者だ。

委員の仕事で忙しそうに駆け回っていることも多いが、そうでないなら常にクラスメイトに囲まれている。

面倒見がよくて優しいし、朗らかで話しやすいので、いろんな人に慕われている。

女の子からもとてもモテるらしい。

……まあ、『勉学に専念したい』と断っているという噂だけど。

真面目で、優しくて、頼りにされていて

そんな広瀬くんなのに……

いや、そんな広瀬くんだからこそ、自分の好きなものの話を思うように出来なかったりするのだろうか。

「……ね、広瀬くん。どうして広瀬くんは、私にお弁当を食べさせてくれたの?」

「え?それは、だから……日下部さんがごはんを美味しそうに食べる顔がいいな、って思っていたから」

「それだけ?」

それだけで、誰にもしなかった話を、特に仲良くもない私に打ち明けたりするものだろうか。