広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き

「おいしい」

「っ、本当!?ありがとう!」

広瀬くんが今までで一番の笑顔になった。

周りに花びらが舞っていそうな満面の笑み。

普段は大人びているのに、この笑顔は子供みたいにあどけなく、そして裏表がない。

本当にただすごくうれしい……そんな表情だ。

「本当においしいよ、広瀬くん。この卵焼き、すごく丁寧に作られた味がする」

そう。

甘さも、焼き加減も。妥協がなく、きっちりしている。

背筋を伸ばし、ぴったり調味料の分量を量る広瀬くんの姿が見えるみたいな味だ。

広瀬くん……一生懸命作ってくれたんだ。

「うん。他のおかずもおいしい!ウインナー、焼くんじゃなくてボイルしているんだね」

「ああ……その方が美味しくなるってきいて」

「あ、ポテトサラダの玉ねぎ甘いー。辛くなくておいしい」

「混ぜる前にレンジで温めると辛味が消えるって本で読んで……」

広瀬くんの解説を聞きながら、お弁当をどんどん食べていく。

ウインナーも、サラダも、鮭も、ご飯の梅干しまで、本当にしっかり丁寧に作られている。

これだけ作るのは大変だったんじゃないだろうか。

時間や手間というより、広瀬くんの気持ちが。

それくらい真面目に作ってあるお弁当だ。