広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き

箱の中にはゴマと梅干しののったごはんと、王道のおかずがつまっていた。

卵焼き、鮭の塩焼き、ウインナー、ポテトサラダ。それに彩りのブロッコリーとミニトマト。

まさに王道まっしぐらという感じで、きっちりきれいに詰められた様子は、まじめな広瀬くんにぴったりだと思った。

「おいしそう!」

「本当!?良かった……」

広瀬くんの瞳が輝きを増す。

期待とちょっぴりの不安というところかな。

それにしても私の一挙一動を見逃すまいと真剣に見つめてきていて、こっちが少し緊張しちゃいそうだ。

……それほど

誰かに自分の作った料理を食べてもらいたかったのだろうか。

私はまず、鮮やかな黄色が目を引く卵焼きを箸でつまんだ。

かすかな重み。

焦げや生焼けの部分もなく、中は見事な層になっている。

料理にこんな表現があっているのかわからないけれど、卵焼きの優等生という貫禄。

ぱくっ

一口で頬張った。

(……あ、甘い卵焼きだ)

砂糖を使った甘い味。

広瀬くんはこっち派なのかあ。

とても優しい甘さだった。