広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き

「ずっと家でひとりで作ってきたんだけど、うちの家族忙しくてほとんど家にいないから、自分で食べるしかなくて」

「それで誰かに食べてもらってみたくなったってこと?」

「うん、…実はそうなんだ」

「なるほど……」

その気持ちはわかる気がする。

お父さんも『料理を美味しいって食べてもらっているときが何より幸せ』ってよく言っている。

せっかく作ったごはん。

自分で食べるだけじゃ寂しい。つまらない。

そんな風に思ったのだろうか。

「そっか。うん!わかった。じゃあ、そういうことなら遠慮なくいただきまーす!」

「ありがとう、日下部さん!」

広瀬くんの顔がパッと明るくなる。

瞳がキラキラ輝いている。

教室では落ち着いた穏やかな表情ばかりだったけれど、こんな顔もするんだな。

少し意外だけれど、すてきだと思った。

(さてさてさて、広瀬くんのお弁当やいかに……!)

ドキドキワクワクしながら黒いふたを開く。

パッとご飯の白が目に飛び込んできた。

「……おおっ!」