広瀬くんは、いっぱい食べる私が好き

「ひ、広瀬くん。お待たせ……」

「いや、全然待ってないよ」

私たちは並んで腰掛ける。

広瀬くんとツーショット。

さぞかし目立ってしまうだろう……なんて思ったものの、同じように中庭で昼食をとる人たちはあまりこちらに注目していないみたいだった。

みんな私たちと同じようにツーショットが多く、それぞれ楽しそうにふたりの世界を作っている。

…そういえば、中庭ってカップルのお弁当スポットって聞いたことがある。

なるほど。

これからあまり目立たないかも。

(……いや、待てよ)

そんな中庭に誘ったということは広瀬くんはやっぱり私を恋人と意識してるとか……!?

「……日下部さん?」

「はっ、はい!?」

「そろそろ食べようか」

「……うん」

「ははっ、なんだか緊張するな」

「!」

緊張……

広瀬くんもドキドキしているんだ。

じゃあ、本当の本当にこれは……

「……あ。しまった」

心の中で大騒ぎだった私は、自分のお弁当を見て我に返った。

お父さん特製のお弁当ひとつ。

私はこれじゃ足りない。