お願いだから、嫌わないでほしい。
ただひたすらに、そう願いました。
草花の茎を折って歩くような足音が、近づいてくるのが分かりました。重い、重い足音でした。僕は息と涙を飲み込みます。
そして純は僕の前に立ちました。僕の前で止まりました。
足が見えました。白い花に埋もれた艶のあるローファーが、僕を見上げていました。
「先生、顔上げて」
純に言われて、僕は頭を上げました。
けれど目線は逸らしたままでした。怖くて純の顔が、見られませんでした。
「予定より早かったね、待ってたよ。行こう?」
差し出された純の手は、震えていました。
そこでようやく、僕は悟りました。
これから僕は僕の好きな人に、地獄へ連れて行かれるのでしょう。



