彼女は泉の水面に目を通していました。じっと何かを見つめていました。
さらさらの黒い髪が肩につくかどうかのところで揺れます。制服を着ていました。胸元でくすんだ赤のリボンが揺れます。
ふわりと風が吹きました。何とも言えない花のいい香りが、体の中に流れ込んできました。開いた口が塞がりませんでした。肺が甘い香りで満たされました。
泉を覗き込み俯いていた顔が上がります。目が合いました。ぱっちりとした黒真珠のような瞳でした。遠くからでも分かりました。彼女は僕を見て立ち上がりました。
膝より少し上の長さのスカート。足元に咲いている花のように、白くて透明感のある肌。
僕は彼女をよく知っていました。
僕は彼女のことを、きっと誰よりもよく知っていると思いました。



