あかいろのしずく

もうそれ以上は、何も言えませんでした。



次に口を開けば、吐き出してしまいそうでした。


何もなくてよかったなんて自分勝手な安堵。

辛かっただろう、怖かっただろうなんて同情。
行き場のない怒りや今更すぎる後悔。


純をどう思っているだとか、どうでもいいことから隠しておきたかった感情まで、胸の中に溜まっているものを全て、吐き出してまき散らして暴走してしまいそうで。






僕が言葉を詰まらせて何も言えなくなって、そうして純はようやく、頷きました。そしてもう一度口を開きました。





「ありがとう。来てくれて、ありがとうね」





いつもより丁寧に、ゆったりとした口調で紡がれる、優しい言葉。
純は目を細めて笑います。僕はまた泣きそうになって堪えました。



それはミナトに見せていたものとは違う、柔らかい笑顔でした。






落し物はもう、見つかりませんでした。