あかいろのしずく


病院に搬送された私は治療され、目が覚めて落ち着いてから警察に事情聴取を受けた。先生のことも事件のことも、私は全て話した。


長い十日だった。
あのためにいくつのものが犠牲になったのだろう?

でも、よく考えれば、あのために先生は、色んなものを犠牲にしたんじゃないかと思った。お金も信頼も心も、そして自分自身の人生も。


それだけ先生は純を想っていたのだ。
では純は? 私は何も聞いていないけれど、純は先生のことをどう思っていたのだろう?


死んでしまった以上、聞きだすこともできない。
私が先生と純のふたりの間に口を挟むのは良くないのだとは思うけれど。やはり気になることはあった。


純が死んだとき、遺書はどこにも見つからなかったのだそう。