「こちらこそですよ」
「これからも頑張ってね。恋も勉強も、両方応援してる!」
さゆりさんは少しずつ、私から離れていく。
足取りは軽くて、その瞳はまだ潤んでいるけど、明るい顔をしていた。まだ少し寒い校舎の中で、二人の会話が寂しく響き渡る。
「恋は余計ですよ」
「あはは、そうかな」
「はい」
「うん、そっか。じゃあね!」
さゆりさんと次に会えるのはいつだろう。
いつかどこかの町で、大人になった私達はすれ違うのだろうか。
さゆりさんは今とさほど変わらない綺麗な女性になっていて、私はその姿を見てすぐに気づいて声をかけるんだ。それでさゆりさんは笑顔で振り返って、その後一緒にカフェなんかに行ったりして。
そう思うと嬉しくなった。
完全にさゆりさんの姿が見えなくなると、私はひとりで呟いた。
「卒業、おめでとうございます」



