温かい手だった。どうしてか、胸が熱くなった。俺は左手に力を込めた。「ありがとうございました」最後にそう言って、ショウトのいる方に向きを変える。


白い息を吐いてショウトが「遅いですよ」と叫ぶ。まだちらちらと粉雪が舞っている。地面には雪が積もっていた。



「ホントにあの山道を歩くんです?」

「そうだよ」



歩いている間、数メートル先で二つの明かりが交わったり離れたり。どこを照らしても真っ白な世界。ずぶり、と重心になった足が途端に沈むのが分かる。

雪が積もっているせいで、西平のいる建物までの山道は車で行けそうにない。スリップでもすれば大変だ。電話でも言ったが、もう歩くしか他に手段はないわけだ。