思い出せば胸を張って言える。
そうだ、俺がここまでして諦めなかったのは、俺のためじゃなかった。

深い眠りから覚醒するような感覚を覚えた。藤谷は笑った。そうなんだ、そっか。と、嬉しそうな顔をした。




「西平くんもね、同じなの」

「え......?」

「どうしてこんなことをしたのか、その答えはね、同じなんだよ」




その時、後ろでドアが勢いよく閉まる音がして、俺は振り返った。
見ると、ショウトが同じように懐中電灯を持って立っていた。

その後方には去っていくタクシー。「先輩行きますよ」ショウトが叫ぶ。



俺はもう一度藤谷の方に振り向く。
藤谷は笑っていた。笑って、俺の冷え切った左手を小さな両手で包んだ。



「どうか、みんな無事で。祈っています」