診療所の倉庫にあった懐中電灯を手に、俺は外に出る。
凍てつく寒さに襲われながらも、藤谷のいるドアの内側に振り返る。
「体調は大丈夫?」
「はい」
「痛いところとか、ない?」
「はい」
「懐中電灯、明かりはちゃんと点く?」
「はい、たぶん。大丈夫です」
お母さんみたいだな、と心配そうな藤谷を見て思う。
この人も苦労してきたんだろう。
好きだった人からこんなことを頼まれて、葛藤もしただろう。俺のような未成年だけじゃない、大人だって色んな所で選択する機会がある。
それが重要であればあるほど迷ったり、怒ったり、傷ついたり。



