あかいろのしずく


俺はもう一つ、今度はどうして嘘をついたのか尋ねた。
西平はあれから五分だっても日が変わっても、診療所に来なかった。


俺はかなり焦ったから、これは少し気になっていた。
藤谷はまだ俺に携帯を持たせたままでいる。




「吾川くん、諦めかけてたでしょう?」

「え?」

「このままだと、ここを出ても、死んじゃうと思った」



診療所の掃除をしながら会話を交わす。死ぬ? 俺が?
床に落ちて粉々に砕けたガラスと、それに混じったホコリをほうきで履く。俺は藤谷が、嘘までついて携帯の奪い合いにまで発展させた意図がこの時まで、掴めないでいた。



「西平くん本気だから、気持ちが中途半端で油断してたら、殺されてしまうかもしれない」