あかいろのしずく

しかし、どれだけ探しても紙は見つからない。どういうことだ? また落としたのか?

もしかして、夜に出かけた時に?
嫌な予感が頭を過る。その時だった。



「正しいよ」




はっきりと、耳に届いた藤谷の声。
藤谷はもう一度、「それが正しいの」と俺の後ろで繰り返した。


猛吹雪が窓ガラスを、割りそうな勢いで激しく叩く。一瞬何も音が聞こえなくなった気がした。正しい。その言葉を聞いた途端、頭の中がクリアになった気がした。




「吾川くん」




俺は後ろから肩を叩かれた時みたいに、ハッとして振り返った。
藤谷は諦めたような笑みを浮かべていた。






「ねえ、少しだけ、話を聞いてくれる?」