あかいろのしずく


俺は手の中に携帯を握っていた。立ち上がって壁を見れば、時計はもう二分過ぎていた。いつ西平が来てもおかしくない。どうする!?



血の巡りが早い。頭からつま先まで体が熱い。
心臓が勝手に一人でに暴れている。



ショウトにかけるにも、番号を記した紙をポケットに持っているジャンパーは藤谷の奥の壁にある。すぐにかけられない。


いや、でもどの道ジャンパーは必要だ。逃げるにしてもこの寒さじゃ、外で凍え死んでしまう。




「すみません、俺、もうこれしか無理です」



藤谷の隣を抜ける。ひったくるように壁からジャンパーを取ると、俺はポケットを漁る。



「自分勝手だけど。あいつの気持ちなんて分からなくてもいい」



本音だった。もうどうでもいい。正直西平のことなんて他人事だ。
俺にはそれよりも優先しないといけないことがある。